2017年5月25日

テロ等組織犯罪準備罪処罰法の改正案が衆議院を通過

昨日、いわゆる「テロ等組織犯罪準備罪処罰法」の
改正案が、衆議院を通過しました。

 

本会議に先立ち、先週の衆議院法務委員会では、
与党+維新による賛成多数で可決されました。
論点も出尽くし、委員から同じような質問が繰り返し
出されるような状況と、
維新の会が提案した修正も加えられたことを
受けた、委員長職権による採決でした。

 

このテロ等組織犯罪準備罪の改正は、
2020年に東京五輪を控えている我々日本人にとって、
生命や財産を守るために有効な備えとなります。

 

重大な組織犯罪が行われようとしているときに、
まだ実行されていないからといって指をくわえ
警察が手も足も出せなければ、多くの人々を危険に
さらしてしまいかねません。

 

もちろん、
「監視社会となり、国民を萎縮させる」
「一般人のプライバシーを侵害する」
といった批判を耳にすれば、不安を感じる方も
いらっしゃるでしょう。
しかし、計画するだけで犯罪となるわけではなく、
「準備行為」がともなって初めて犯罪が成立しますので
「共謀罪」という呼び名は、過度な不安を招いている
のではないかと感じます。

 

また、その不安を感じさせる想定事例の多くは、
法律そのものの問題ではなく
この法律を濫用し、不当な捜査や不当な警察権の行使などを
おこなう警察の方に問題があるケースです。

 

言うなれば、仮にどんなに非の打ち所のない法律だとしても、
警察が不当に解釈して警察権を濫用すれば、それは当然、
国民が萎縮する社会をつくってしまいます。

 

大切な事は、警察が警察権を濫用すると決めつけて、
国民を守るための法律を最初から封じ込めるのではなく、
備えるべきは備えたうえで、
国民が安心できるような警察の体制確立、または
国民との信頼関係の構築なのではないでしょうか。

 

また、この法改正は、TOC条約と言う国際条約からも
要請されているものです。
条約締結国が、それぞれの国内でこのような組織犯罪を
取り締まる法律を作っておくことで、国際テロなどの
有事の際、国境を越えた連携を深めることを可能にし、
いざと言う時に国際社会から捜査協力や国際組織犯罪の
情報を得ることができます。
日本は、15年前にこの条約締結の国会承認を行っているにも
関わらず、未だ締結には至っていません。

 

「この法改正ナシでも技術的にはTOC条約を締結できる」
→ だから、この法改正は不必要である。
という声もありますが、
何のための条約締結で、国民を守るためにどのような環境を
作っておくことが必要なのかという「本質」を
考えれば、TOC条約締結当初の時点から、
国内でしっかりとこの法改正で備えておくのが妥当だと
私は思います。

 

※ なお、権力の濫用を心配する不安とは逆に、
「こんな手ぬるい法律では、テロは防げない」という
逆サイドの懸念からの批判もあります。
しかし、計画段階のみで処罰される従来の「共謀罪」には
私も批判的な立場です。

 

―― この法案は、このあと参議院で審議にかけられ
より詳細にわたっての議論が行われます。
参議院での審議を通じ、より多くの国民の皆さまに
安心と納得が得られる法律となることを切に願います。